2025.04.23「膳所高生の可能性を信じてください!(ご家族へのメッセージ)」(最終回)昭和60(1985)年卒 野口 聡
3年生の11月の花園予選決勝戦で敗退、1年間の浪人後京都大学に進学する。マサチューセッツ工科大学(MIT)で建設経営学の修士を取得、現在は京都の建設会社で経営者として働く。2024年からOB会の副会長を務める。
すべての方のメッセージを掲載できなかったことをお詫び申し上げます。
他にも数多くの印象深いメッセージが掲載されたホームページの「マスターズ花園2022メモリアルブック」をご覧ください。
選手やマネージャーへのメッセージはすでに数多く紹介したので、私は新入生のご家族へメッセージをお送りしたいと思います。
ラグビーを始めたいと思っている新入生をお持ちのご家族は、その可能性を信じてあげてください。せっかく進学校である膳所高校に入学したのだから、勉学に専念して有名大学に現役で合格してほしいと願っていらっしゃることと思います。私も2人の子供を持っているので、その想いは十二分に理解できます。しかし、膳所高校に入学できた新入生の潜在能力は無限大です。入学当初から志望校を定め、部活動と勉学を両立させる計画を立てられれば、ラグビーをプレーしながら志望校現役合格は不可能ではありません。
私の昔の経験ですが、私が大学3回生の4月、膳所高校生は自らの限界を作っていたことに気づきました。なぜなら、その年の正月に花園ラグビー場で伏見工業高校と準々決勝を戦った大阪府立北野高校の選手が3名京都大学に入学してきたからです。北野高校のラグビー部では3年生の秋季大会まで活動して、現役で志望校を目指すのは入学当初から当然のことと思っていたそうです。私が膳所高校ラグビー班に入部する前までは、京都の代表に勝たなければ全国大会ヘは出場できなかったと記憶しています。京都の壁は厚く、花園へ行くことは現実的でありませんでした。滋賀の優勝校が全国大会に必ず進出できるようになった後も、私たちは全国大会を目指すという目標を持ちませんでした。私は3年生の秋季大会までラグビー続けましたが、花園出場を目指していた訳ではありません。自分に限界を作り、自らの可能性を閉ざしていたことを後悔しています。幸いなことに私の3学年下の後輩が花園初出場してくれたことが、自らの後悔の念を少し和らげてくれていますが。
進学のこと以上に、怪我のリスクを懸念されているご家族も多いこととお察しします。私の両親もいつも心配していました。昔は現在ほど科学的なトレーニング方法や怪我をした際の対処方法が確立されていませんでした。脳震盪にはやかんの水を掛けるだけの処置がまかり通っていました。昔と変わりなければ、私は自分の家族にラグビーをプレーすることを勧める気にはなりません。しかし、現在のラグビー界では安全にプレーできる環境やルールが整えられています。そのことは、先日スターティングコーチのライセンスを取得する講習の中で良く理解できました。
怪我を回避できるようにOB会も支援しています。ラグビーで発生する怪我の約4割はタックルに関連したプレーで発生している統計があります。3月16日に開催したOBと現役の合同練習では、膳所高校ラグビー班出身の元トップリーガーの林氏がタックルについて理論解説付きで指導する機会を作りました。膳所高校ラグビー班出身の日本代表セブンズのストレングス&コンディショニングコーチ坂田貴宏氏から体づくりのトレーニングメニューを教えてもらえます。
最後に、なぜラグビーなのか?将来社会人として自らの才能を発揮できる素養を自ずと身に着けられるからです。ラグビーのような大人数で行うチームスポーツでなく、個人競技によりマイペースで心身を鍛錬すれば良いという考えをお持ちの方も少ないように感じています。会社経営者として若手社員と接する中で、自らの能力を発揮できず社会人として順調に歩みだせない人を度々見かけます。大卒者の35%が離職する時代ですが、職種が自らに向いていないだけの理由でなく、社会人として素地を養っていないこともその理由ではないかと感じています。
学生と社会人では大きな違いがあります。学生の特徴は、個人での活動、正解のある課題、先生や家族の指南、時間の自由度等が挙げられます。一方、社会人の特徴は、組織での活動、答えのない課題、責任を伴う自らの判断、仕事優先の時間配分等が考えられます。社会人としての活動の仕方に馴染めなければ、学力が優秀であっても社会では評価されにくいと思います。社会人に求められる素養を身に着けられるスポーツがラグビーであることは、先輩たちのメッセージから読み取れたのではないでしょうか。
① ラブビーでは、15人の多種多様なチームメイトとコミュニケーションを図り意思統一して組織としてゴールに向かわなければなりません。
② チームや個人のスキルやフィットネス上の課題を洗い出し、要因を分析して、最適解を導き・実行することを自主的に練習で行います。試合では、どの様な不利な局面でも立ち止まることなく前進しながら局面打開の方策を見出します。
③ 野球やサッカーと異なり、ラグビーでは試合が始まると監督の指示は仰ぎません。キャプテンを中心に選手間の話し合いを通してゲームの方針を決定します。
④ 15人という大人数のスケジュールを調整して練習や練習試合の日程を決め、チームの予定を優先して自らのスケジュールを管理しなければなりません。
将来の自己実現にラグビーが寄与することは確かだと思います。
OB会の総力を結集して、皆さんを応援していきますので、“What are we playing rugby for?”の答えを一緒に探しませんか?ご家族もご一緒に!
Welcome to the BLACK BUCKS family!!!
明日と明後日は、現役生へのメッセージを掲載します。