2025年の記事一覧 [ 9/15 ]

REPORT & TOPICS

2025.04.18「ラグビー憲章で掲げる五つのコアバリュー」昭和54(1979)年卒 船橋 寛明

同志社大ラグビー部で大学選手権3連覇を経験

 

皆さん、ラグビーと聞くと、どのようなイメージをお持ちでしょうか。

いわゆる3K「きつい、汚い、危険」と思っておられるのではないでしょうか。確かに言い得て妙なところはありますが、それ以上に他のスポーツにはない魅力あふれるスポーツだと思っています。

私がラグビーを始めるきっかけは、父親が膳所でラグビーをしていたことから、中学生当時にラグビーをされていた方々から熱いお話を聞く機会があったからです。

ラグビー班は、1948年(昭和23年)に創部されました。終戦からわずか3年しか経っていない当時は食べる物はもちろん、道具やグラウンド、プレーする環境などあらゆるものが不足していた時代であったと先輩方に伺いました。そんな中においても、情熱をもってラグビーを愛し、勉学に勤しんだ先輩方が、なぜラグビーに魅了されたのかを知りたいと思うとともに、自ら体験したいという気持ちが大きくなりました。

中学生当時、受験できるラグビー部がある高校は、瀬田工業と膳所しかありませんでした。中学校での成績はそれほど優れたものではありませんでしたが、膳所に入ってラグビーをしたいという一心で勉強を頑張り、何とか合格し、入部しました。3年間、ラグビー漬けの日々を過ごした後は、大学、社会人とプレーし35歳で一線を退きました。

私は身長が160cmほどしかありません。ラグビーはどんな体形、どんな性格でも、いつから始めても、プレーできる極めて稀なスポーツだと思います。15人がそれぞれのポジション毎の役割を持って、手でボールを扱うことができるスポーツのため、それまでのスポーツ経験や技量などがなく、高校から始めても決して遅くありません。私も高校から始めましたが、仲間と県大会優勝や近畿大会出場、高校2年からは日本代表候補や関西代表などにも呼ばれ、同志社大学では3回日本一なるなど貴重な経験を味わいました。

また、息子も膳所でラグビーを始め、3年生の全国大会出場を賭けた秋の県大会で敗れましたが、仲間たちとラグビーを悔いなく楽しんだと思います。

ラグビー憲章で掲げる五つのコアバリュー『品位、情熱、結束、規律、尊重』は、ラグビー独自の特性と理念をプレー中でもプレー外でも守っていくための手引きです。

礼儀や節度をもって気高く落ち着き振る舞う「品位」、誰もが心の奥底に持っている熱い思いで困難に打ち勝つ「情熱」、生涯続く友情・仲間・チームワークで思いを一つにする「結束」、ルールだけでなく、人としての定め、集団の秩序で着実に実践・遂行する「規律」、そして、敵味方なく多様な価値観を理解し合う「尊重」――。これらを若い間にラグビーを通じて体感、経験することは、その後の人間形成や人生、社会人として日本の未来を背負うみなさんには大いに役立つと確信しています。ラグビーを通じて養われる人間力と意思疎通をするコミュニティー力、全てを許す抱擁力やみんなと目指す団結力など、勝つことだけでない、魅力あふれるスポーツだと思っています。

しんどいこともどろどろに汚れることも、痛いこともいっぱいあります。でも、勉学だけではなく、大切な仲間たちと過ごした年月は永遠に色あせることはありません。

高校生活を充実させたいのなら、ぜひ一度、ラグビーを体験してみませんか。必ず、その魅力に魅了されることでしょう。

 

転載:野口(1985卒)

2025.04.17「みんなに居場所のある競技」昭和60(1985)年卒 奥谷 晃史

体格に恵まれている訳でもなく、現役当時、身長は平均的でしたが、体重は確か52㌔とかなり軽量だったと記憶しています。

そんな自分がそれなりに続けられたのは、ラグビーという競技の特性というか、できるポジションがあったからだと思います。

自分に合ったポジションが必ずある、それがラグビーの魅力の一つということは経験者の皆様にはご理解いただけるかと思います。

また、良い仲間、先輩方、後輩達と出会えたことも大きかったと思います。

ラグビーは、アタックもディフェンスも味方をフォローすることが大切であること、規律を守ること、自分を鍛えること、勝つために組織としてどう試合を進めるか考えて練習すること、危険なスポーツだけに相手への敬意が必要なこと等、ラグビーで得た経験は社会で生活していく上で必ず役に立つと今回再認識しています。

 

転載:野口(1985卒)

2025.04.16「ラグビーは脳を鍛える ノーベル賞も取れる」平成9(1997)年卒 谷口 誠

元ジャパンの著名選手や関係者らからも「厳しくも愛のある」ラグビー記事が絶賛・信頼されている現役ラグビー記者

 

高校生となった皆さん。新しい環境で何をしようと考えていますか?

勉強をしたい。友達と遊びたい。ゲームもしたい。部活動してる暇なんかないよ。そう考える人も多いと思います。

通学だけで時間がかかる人も多いでしょう。僕も片道1時間半かけて通っていたので、気持ちはよく分かります。

まして、痛くてしんどそうなラグビーなんか論外。そう感じるのも当然です。ただ、知っておいてほしいことがあります。

「ラグビーは脳を鍛える」ということです。

運動が脳にいい影響を与えることは、様々な研究で示されています。アメリカの医学者が書いた『脳を鍛えるには運動しかない』という本があります。運動中に体内でできるホルモンには脳の神経同士の結びつきを強くし、長期的な記憶力を高める効果があるそう。少し軽めの強度で行う「有酸素運動」には、記憶力を良くする細胞をつくる作用があるとも書かれています。

部活をしたら勉強時間が減るから意味がない。そう思う人も多いでしょう。しかし、人の行動は単純な算数では測れません。

ベネッセ教育総合研究所が、中学・高校生の生活状況を調べています。コロナ禍で部活が制限されました、代わりに増えたのはスマホやテレビなどを見ている時間だけ。勉強時間は変わりませんでした。

僕が膳所高生だったときも、勉強に専念しようと部活をやめる同級生がいました。でも、成績が上がった人の方が少なかった気がします。「最後まで部活をしていたら良かった」と今、後悔している友達もいます。

時間に余裕ができると、かえって勉強の「質」は上がりにくい。そういう場合もあります。

ラグビー日本代表として活躍した福岡堅樹さんを知っているでしょうか? 2019年に日本で開かれたワールドカップで俊足を生かしてトライを取りまくった人です。この大会の後に現役を引退し、順天堂大学の医学部に合格しました。

高校時代から文武両道で鳴らした福岡さんにとって、ラグビーと勉強を両立させるには「切り替え力」が重要だったそうです

著書などで、「効率を最大限にするために有効な手法が『切り替え』と『集中』」、「トレーニングを切り替えのタイミングとして生かせたのが大きいかもしれません」と語っています。ラグビーをすることがむしろ、勉強の集中力にもつながったそうです。

僕自身の経験からもそう思います。現役時代に受験に落ちて浪人しました。時間はたっぷりあったのに、逆に勉強に身が入らず、秋の模試は現役時代より成績が低下。最後に巻き返して合格できたのは、ラグビーで培った「切り替え力」が生きたのかも。今となってそう感じます。

「切り替え力」などの力は、「非認知能力」と呼ばれます。テストなどで測れる学力とは違うもので、コミュニケーション力や協調性、物事をやり抜く力などが挙げられます。何かの分野で結果を出すにはこうした能力が重要として最近、注目されています。

非認知能力を学べる場がスポーツであり、中でもラグビーでしょう。

ノーベル賞受賞者の山中伸弥さんという医学者がいます。再生医療を大きく発展させた、iPS細胞を見つけた人です。

研究は1人ではできない、いかに他の人と意思疎通をしながら進めるかが大事。そう語る山中さんは、大学時代のラグビー経験を踏まえてこう強調します。

「コミュニケーションはその機会を多く取ることも大切だけど、やろうと思わないといけない。(相手は)分かっているやろうけど言う、その辺がすごく大切。ラグビーはそういうことをすごく学ぶことができる」

ノーベル賞につながる研究成果を出す上で「ラグビー経験はものすごくありがたかった」そうです。

ラグビーは、野球の大谷翔平選手のように1人で試合を決めることはできません。監督の指示なしに、15人の選手が自分たちの判断でプレーをする。そのため、他の競技よりチームワークや自主性が問われます。コミュニケーション能力のような非認知能力を学べる効果は大きいと考えられます。

なぜラグビーをするといいのか。いくつか述べましたが、他にも理由があります。純粋に楽しいということです。

自分の頭で考え、相手と全力でぶつかり合う魅力、仲間との一体感は、他の競技にはちょっとないものだと思います。僕の場合、それが行き過ぎてラグビーやスポーツに関わるメディアの仕事をすることになってしまいましたが。

同級生に誘われ、膳所のグラウンドで楕円球に触れたことは、僕にとって人生で最大の出会いの一つでした。多くの先輩、後輩が同じように感じているでしょうし、これを読んでいるあなたもいずれ、そうなるかもしれません。

20221025【ラグビーマガジン2022年12月号掲載】ZRFCマスターズ出場記事(ZRFC1997卒・谷口誠)

※ラガーマンの永遠の必読バイブル「ラグビーマガジン」を皆さん、愛読しましょう!ラグビーマガジンさま、転載許諾をいただき、誠に有難うございます。

 

転載:野口(1985卒)

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