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REPORT & TOPICS

2025.04.24「ラグビーは好きか」令和6(2024)年卒 北村 遼介

3年生秋の全国花園大会・県予選までラグビー班活動を継続・完遂し、2024年春に京都大学に現役合格

 

第1.要旨

3年生の春を前に進路に悩む皆さんへ、2つ伝えたい。

まず、ラグビーをやりたいなら秋の大会まで続けてほしい。受験勉強を不安材料にラグビーをあきらめなくていい。

そのうえで、秋の大会まで続けてこそ得られる魅力がある。

 

第2.引退時期の判断基準

春の大会を機に引退するか、秋の大会まで続けるか。これは、膳所高校ラグビー部の3年生の大半が経験してきた問題だ。3年生は高校ラグビーの集大成を迎える、一方で、進路実現のために受験勉強に多くの時間を割かねばならない学年でもある。私や同級生、先輩たちも、それぞれの置かれた状況、部活や進路への複雑な思いを胸に、悩み抜いた末に決断を下した。今、3年生の春を迎えようとする皆さんも、大いに悩んでいることだろう。

そこで、私は一つ提唱したいことがある。それは、「ラグビーを続けたいなら秋の大会まで続けるべきだ」ということだ。言い換えるなら、受験を理由に部活の引退時期を決めてほしくない。

1.ラグビーを動機にすべき理由

私がラグビーをやりたいかを動機に部活の引退時期を決めてほしいと考えるのには、以下の2つの理由がある。

まず、ラグビーをやりたいか否かという動機が、自分自身にとって最も納得しやすい理由になる。いつ引退するか、すなわち、春の大会ののちにラグビーをするかしないかという問いに対して、ラグビーをしたいか否かで答えを出すことが、自分に対して最も正直な答えである。そして、自分に対する正直な答えは、自分自身を納得させる。どんな道を選んでも、その先に困難が待ち受けていることがある、時に自分が下した決断が正しかったのか迷いが生じる。そんな時に、自分に対して正直に答えを出したならば、胸を張って選んだ道を進める。

さらに、ラグビーをしたいという動機で秋の大会まで続けることを選んだなら、それはラグビーに対する最大のモチベーションになる。3年生の春の大会を迎えるまでも、何らかのモチベーションをもってラグビーをしていることだろう。しかし、それ以降のモチベーションは比べ物にならない。あえてラグビーを続けるという決断、それは決して軽くない。これから最後まで突き進む、そんな気合が入り、大きな原動力になる。そして何より、好きなことをやると選んだこと、それは、今自分は好きなことを思い切りやっているという実感を高める。もともと楽しかったラグビーがさらに楽しくなる。

 

2.受験との両立をどうするか

これまで多くの人が部活の引退時期を迷ってきた最大の要因は受験勉強との両立への不安だろう。膳所高生の大半はいわゆる難関大学への進学を最大の目標にしているだろう。最大の目標たる受験を優先したいのは自然なことだ。しかし、私は断言したい、受験勉強と部活の継続は天秤にかけるべきではない。

まず、いつ引退したかによって受験がどうなるかはわからない。100%受験に合格する人もいなければ、100%受験に落ちる人もいない。当然だが、春の大会で引退すれば受験に合格する保証もなければ、秋の大会まで続けたら受験に受からないわけでもない。あえて言うなら、最悪のシナリオはラグビーをあきらめた挙句受験に落ちることであり、最善のシナリオはやりたいことをやったうえで受験にも合格することではなかろうか。受験という不確実な未来のために、ラグビーを犠牲にするのはもったいなくはないか。

一方で、春の大会で引退した方が受験勉強に充てられる時間が増えることは否定の余地がない。だから、春の大会で引退した方が、受験に合格する可能性が高まるという反論が生じる。もちろん、最低限の勉強をしなければ受験の合格の可能性は下がるだろう。しかし、単に勉強時間が増えれば受験に合格できるわけではないだろう。例えば、膳所高校ラグビー部では短期集中を掲げており、練習時間が比較的短い。練習の密度を高めるように工夫してきたし、今もそうであるはずだ。決められた時間内でより強くなるために日々頑張ってきたはずだ。同じだ。時間を最大限活用して受験勉強の成果を上げる術を、ラグビーを通して身に着けているはずだ。

さらに、ラグビーを続けることが何らかの形で、受験へのモチベーションになることも大いにある。私の場合、最後まで「膳所の3番」であったという自負は受験勉強への大きな原動力になった。部活をやり切ったことへの自信は、受験にも作用する。ほかにも、森先生が「文武連動」という言葉を口にするのを一度は聞いたことがあるかもしれない。端的に言えば、勉強とラグビー、それぞれが相乗効果として、互いを高めあうということだ。

以上のように、まず受験の結果に確実性はない。そして、受験勉強と部活は単に時間を奪い合うだけでなく、互いの価値を高めることもある。だから、受験のために部活をあきらめなくていい。

 

第3.部活を続けることの魅力

上述のように、ラグビーをしたいか否かを最優先して、いつ引退するかを決めてほしい。それが一番の思いだ。ただ、秋の大会までラグビー好きを貫いた一人のOBとして、部活を続ける魅力を少し語らせてほしい。

まず、3年生の夏が高校ラグビーで最も成長できる時間だ。3年生はチームの中で主体的な役割を担う機会が多いうえ、1年生や2年生の時よりフィジカルは強化され、スキルが高まっている。その分成長のチャンスは大きい。そして、上記のように秋の大会まで続けることを決断してからはモチベーションが違う。モチベーションが高いことは、必然的に成長速度を高める。だからこそ、3年生の春の大会が終わってからが高校ラグビーの半分だと言って過言でないほど、そこからの時間は密度が濃い。

次に、最後まで部活をやり切った満足感は計り知れない。3年生の春を過ぎれば、クラスメイトの大半が受験勉強にシフトするだろう。その中で、自分にはまだラグビーがある、BLACK BUCKSというホームがあることは爽快感をもたらす。本当に好きなことを貫けているという実感を得られる。また、高校ラグビーのメインの大会は秋の大会とその後の花園である。そのメインの大会までやり切れたことは大きな満足感や自信を生む。

さらに、高校でしか得られない生涯の思い出を得られる。私にとって、高校生活の思い出の多くは、ラグビーやラグビー部がかかわるものだが、最も印象深いのは、3年生のときの菅平合宿だ。夢のような4日間だった。合宿の聖地たる菅平で、思い切りラグビーをしたこと、仲間と時を共にしたこと、それはまさに生涯忘れえぬ思い出だ。高校卒業後、どんな道に進んだとしても、膳所でラグビーをできるのは、高校の時だけだ。人生で一度のチャンスを逃すのはあまりにもったいない。

いろいろと語ったつもりだが、それでも伝えきることはできない。秋の大会まで続けてこそ初めてたどり着く景色がある。ぜひ味わってほしい。

掲載:野口(1985卒)

2025.04.23「膳所高生の可能性を信じてください!(ご家族へのメッセージ)」(最終回)昭和60(1985)年卒 野口 聡

3年生の11月の花園予選決勝戦で敗退、1年間の浪人後京都大学に進学する。マサチューセッツ工科大学(MIT)で建設経営学の修士を取得、現在は京都の建設会社で経営者として働く。2024年からOB会の副会長を務める。

すべての方のメッセージを掲載できなかったことをお詫び申し上げます。

他にも数多くの印象深いメッセージが掲載されたホームページの「マスターズ花園2022メモリアルブック」をご覧ください。

選手やマネージャーへのメッセージはすでに数多く紹介したので、私は新入生のご家族へメッセージをお送りしたいと思います。

ラグビーを始めたいと思っている新入生をお持ちのご家族は、その可能性を信じてあげてください。せっかく進学校である膳所高校に入学したのだから、勉学に専念して有名大学に現役で合格してほしいと願っていらっしゃることと思います。私も2人の子供を持っているので、その想いは十二分に理解できます。しかし、膳所高校に入学できた新入生の潜在能力は無限大です。入学当初から志望校を定め、部活動と勉学を両立させる計画を立てられれば、ラグビーをプレーしながら志望校現役合格は不可能ではありません。

私の昔の経験ですが、私が大学3回生の4月、膳所高校生は自らの限界を作っていたことに気づきました。なぜなら、その年の正月に花園ラグビー場で伏見工業高校と準々決勝を戦った大阪府立北野高校の選手が3名京都大学に入学してきたからです。北野高校のラグビー部では3年生の秋季大会まで活動して、現役で志望校を目指すのは入学当初から当然のことと思っていたそうです。私が膳所高校ラグビー班に入部する前までは、京都の代表に勝たなければ全国大会ヘは出場できなかったと記憶しています。京都の壁は厚く、花園へ行くことは現実的でありませんでした。滋賀の優勝校が全国大会に必ず進出できるようになった後も、私たちは全国大会を目指すという目標を持ちませんでした。私は3年生の秋季大会までラグビー続けましたが、花園出場を目指していた訳ではありません。自分に限界を作り、自らの可能性を閉ざしていたことを後悔しています。幸いなことに私の3学年下の後輩が花園初出場してくれたことが、自らの後悔の念を少し和らげてくれていますが。

進学のこと以上に、怪我のリスクを懸念されているご家族も多いこととお察しします。私の両親もいつも心配していました。昔は現在ほど科学的なトレーニング方法や怪我をした際の対処方法が確立されていませんでした。脳震盪にはやかんの水を掛けるだけの処置がまかり通っていました。昔と変わりなければ、私は自分の家族にラグビーをプレーすることを勧める気にはなりません。しかし、現在のラグビー界では安全にプレーできる環境やルールが整えられています。そのことは、先日スターティングコーチのライセンスを取得する講習の中で良く理解できました。

怪我を回避できるようにOB会も支援しています。ラグビーで発生する怪我の約4割はタックルに関連したプレーで発生している統計があります。3月16日に開催したOBと現役の合同練習では、膳所高校ラグビー班出身の元トップリーガーの林氏がタックルについて理論解説付きで指導する機会を作りました。膳所高校ラグビー班出身の日本代表セブンズのストレングス&コンディショニングコーチ坂田貴宏氏から体づくりのトレーニングメニューを教えてもらえます。

最後に、なぜラグビーなのか?将来社会人として自らの才能を発揮できる素養を自ずと身に着けられるからです。ラグビーのような大人数で行うチームスポーツでなく、個人競技によりマイペースで心身を鍛錬すれば良いという考えをお持ちの方も少ないように感じています。会社経営者として若手社員と接する中で、自らの能力を発揮できず社会人として順調に歩みだせない人を度々見かけます。大卒者の35%が離職する時代ですが、職種が自らに向いていないだけの理由でなく、社会人として素地を養っていないこともその理由ではないかと感じています。

学生と社会人では大きな違いがあります。学生の特徴は、個人での活動、正解のある課題、先生や家族の指南、時間の自由度等が挙げられます。一方、社会人の特徴は、組織での活動、答えのない課題、責任を伴う自らの判断、仕事優先の時間配分等が考えられます。社会人としての活動の仕方に馴染めなければ、学力が優秀であっても社会では評価されにくいと思います。社会人に求められる素養を身に着けられるスポーツがラグビーであることは、先輩たちのメッセージから読み取れたのではないでしょうか。

① ラブビーでは、15人の多種多様なチームメイトとコミュニケーションを図り意思統一して組織としてゴールに向かわなければなりません。

② チームや個人のスキルやフィットネス上の課題を洗い出し、要因を分析して、最適解を導き・実行することを自主的に練習で行います。試合では、どの様な不利な局面でも立ち止まることなく前進しながら局面打開の方策を見出します。

③ 野球やサッカーと異なり、ラグビーでは試合が始まると監督の指示は仰ぎません。キャプテンを中心に選手間の話し合いを通してゲームの方針を決定します。

④ 15人という大人数のスケジュールを調整して練習や練習試合の日程を決め、チームの予定を優先して自らのスケジュールを管理しなければなりません。

将来の自己実現にラグビーが寄与することは確かだと思います。

OB会の総力を結集して、皆さんを応援していきますので、“What are we playing rugby for?”の答えを一緒に探しませんか?ご家族もご一緒に!

Welcome to the BLACK BUCKS family!!!

 

明日と明後日は、現役生へのメッセージを掲載します。

2025.04.22「“One For All, All For One”の体現」昭和63(1988)年卒 元持 弘二

ラグビーとの出会いは、ものすごく単純なものでした。中学3年、高校受験まっただ中にあって、高校ラグビー部を題材とするテレビドラマにハマったのが始まりでした。そんな単純な動機で始めながらも、社会人選手としてプレーを終えるまでの15年近くラグビーを続けてきた、続けてこられた理由は何だったのか。

いままでやったことのない初めてのラグビー。危なそう、痛そう、怖そう、ルールが難しそう等々、いろんな不安があったことは確かです。しかし、周りを見渡せば同期で経験者は二人だけで、同じ様に初めて楕円球に触れる仲間ばかり。そんな「初心者」仲間が大勢集まって高校生から新たに挑戦できるスポーツはラグビーくらいしかありませんでしたし、恐らく今でも公立高校にあっては、そんなスポーツはラグビーくらいしかないのではないでしょうか。

そんな仲間がいたからこそ、不安はいつしか楽しみに変わり、ただただ楽しかっただけのラグビーも、いつしかより高みを目指すようになり、勝つことに喜びを覚え、ともに切磋琢磨し、皆で大きな目標を達成することができたことは、その後の人生においてもかけがえのない財産になりました。

ラグビーはスポーツの中でもフィールドに立てる人数が一番多いスポーツです。身体の大きな人や小さい人、足の速い人やそうじゃない人、力持ちの人やそうじゃない人等々、いろんな個性を最大限に生かして、それぞれの役割や責任を果たしながらOne Teamとなって戦うスポーツでもあります。

One For All , All For Oneという有名な言葉があります。自分よりも大きな相手にもひるむことなく果敢に立ち向かい、身体を張って自分の役割や責任を全うする。自分がタックルされたときにはチームの皆がいちはやく駆けつけてサポートしボールを確保してくれる。また自分が犯したミスにも皆が必死になってそれをカバーしてくれる。どんなスポーツでも 同じような場面があると思いますが、ラグビーというスポーツはOne For All , All For Oneをまさに身体を張って体現できる、させてもらえるというところが最大の魅力だと自分は思いますし、15年近くも続けた、続けてこられた答えだと思っています。

長い人生の中で、皆で身体を張って目標に向かって取り組む・戦うこと、あるいは大事な人やモノ・コトを守るような場面はそうそうないでしょう。ラグビーで得たその経験や体験は必ずや自身の大きな財産となります。勝ち負けに拘らず、そういう経験や体験ができる。それがラグビーです。「ラグビーは、少年をいちはやく大人にし、大人にいつまでも少年の心を抱かせる」と言われる由縁は、こういうところにもあるんだと思います。

膳所高校に入学を果たされた今、生涯を通じて友と言える仲間を探しに、そして皆で身体を張って目標に向かって戦う喜びを得るために、ぜひ、ラグビー班の門戸を叩いてみてください! かけがえのない財産を得られると信じて止みません。

 

転載:野口(1985卒)

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